東郷高校

プロスペクト発掘の夏②


愛知の大学野球界(もしかしたら社会人野球かもしれませんが)を盛り上げてくれるであろう有望選手をピックアップする記事の第2弾は金子蓮汰投手(東郷高校)です。

プロスペクト発掘の夏①

個人的には今年の高校3年生ではナンバーワン級の投手に推したい一人です(強豪私学の主戦級をまだ見ていませんが)。ボールの切れというところでは及びませんが実戦力の高さは愛工大名電時代の東克樹投手(現DeNAベイスターズ)に迫るレベルにあると思われます。「ゾーンを広く使える事」「ボール→ストライクの軌道、ストライク→ボールの軌道、どちらの変化球でもカウントが取れる事」「ゾーン内で勝負できる変化球を使える事」etc.既にこれだけの強みを兼ね備えています。ストレート一本で押すような場面が増えてくると更に見栄えが良くなると思いますが、中堅公立校の投手としては出色の存在です。愛知大学野球の2部リーグでなら今すぐにでも勝ち投手になれると思います。

今回はそんな金子投手の投球フォームについて考察してみたい。

連続投球フォーム
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ノーワインドアップから始動します。

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グラブを高く上げ、この時点でグラブからボールを抜き始めています。

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グラブを高く上げているので上体の前にスペースが生まれ、右膝を胸まで上げられています。

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ここでグラブからボールを離し両腕を真下に下ろします。

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一旦下げた右脚を二塁方向へ切り込ませています。

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膝から下を二塁方向へ投げ出すように使っています。
本塁方向へ向かう為の助走のような動作だと思われます。


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小指を上に向けながら右腕を突き出します。
この時点で上体が突っ込み気味ですが意図的だと思われます。


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右腕と右脚を捕手方向へ投げ出しダイナミックにステップします。

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右腕と右脚を大きく使い、下半身を開かせて行きます

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左前腕の回内(内捻り)を使ったフィニッシュです。
右脚の伸展が強く、骨盤へと接地の反力が伝わっています。
両脚の膝が接近し、骨盤の回転を起こしています。


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上体回転により、左肩が捕手方向を向いています。

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軸足(左脚)が蹴り上げられスパイクの裏が天を向きます。
骨盤が縦に回転しています。

まとめ
3学年上の先輩・山本一輝投手(東郷高校→中京大)に似たような身体的特性だと思われます。右脚がインステップしやすく開きにくい特性の下半身ですが、右腕と右脚を大きく使いながらステップをして行く事で右股関節を支点としたボディターン(上体回転)を実現できています。上体回転を使った投球動作が出来ているだけでも稀有な存在ですが、右足が踏み込んだ時の力をリリースのパワーへと転化出来ているのも着目すべきポイントだと思います。フィニッシュからフォロースルーにかけて軸足(左脚)が蹴り上げられており、体重移動のパワーを余す事無く使えていると思われます。

「逆W型」のテイクバックを採用していますが、「ワインドアップ」→「両腕の脱力」→「テイクバック」→「フィニッシュ」までの間で両腕の上下動が二度起きています。一度目の上下動には二度目の上下動へ向けた惰力のような効果があるのかもしれません(連続落下系のジェットコースターみたいなイメージですね)。上から下へのエネルギーを生み出しているのだと思われますが、藤川球児投手も取り入れてる動きですね。

トップが気持ち遅めに見えるのは気になるポイントですが、全般的には完成度の高い投げ方です。下半身の可動域が広がればストレートの平均速度も上がって来るでしょう(現在は最速140km/h)。卒業後の活躍に大きな期待を抱かせるような存在です。

テイクバック
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最大加速期
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リリース
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東海クオリティの東海クオリティたる所以



愛知の学生野球界では無名公立高校出身の投手がドラフト候補へ変貌するような事が度々起こります。2017年の県大会(夏)初日に対戦した岩津高校と東郷高校の試合も後々語り継がれるような大物同士の投げ合いだったという事になるのかもしれません。岩津高校が9-4のスコアで快勝した試合ですが、この時の東郷高校は当時2年生の眞田拓投手(現・名城大)と当時1年生の金子蓮汰投手が登板しました。眞田投手、金子投手共に最終学年では最速140km/hをマークするようになり、県内屈指の好投手と呼ばれるようになりましたが、そこまでの急成長を遂げる事は予想できませんでした。


この試合を制した岩津高校には当時3年生の土肥大輝投手(現・愛知東邦大)と当時2年生の池津智紀投手(現・日本福祉大)が在籍していましたが、土肥投手は進学先の愛知東邦大で早くも主戦格として起用されています(現在大学2年生で1年生の秋季から公式戦で登板しています)。実戦力の高い下手投げの池津投手も大学野球で台頭して来る可能性の高い存在です。ちなみに東郷高校戦は、この二人の投手で継投しましたが土肥投手は体調不良で降板したと記憶しています(熱中症でしたかね)。

という感じで、甲子園常連校だけでなく中堅公立校や無名公立校にも有力選手が多いので、油断せずに色々見ておくとブレイク前の姿を目の当たりに出来るかもしれません。
 

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金子蓮太投手(東郷高校※1年生時)

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眞田拓投手(東郷高校※当時2年生)

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土肥大輝投手(当時3年生)

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池津智紀投手(当時2年生)

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愛知東邦大に進学後の土肥投手



山本一輝投手(中京大学3年生)

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別の投球動作内からの補足写真(最大加速期)
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山本一輝投手(中京大学)の最新版投球フォームです。後方へ引いた右脚を引き上げるような形のセットポジションから始動。この連続写真では省略していますが、右膝が胸まで上がる片脚支持のフェーズ(6枚目の写真)が非常に長く、ステップ動作へ入るまでの溜めを作れています(左股関節上に頭部を残す時間が長い)。又、 グラブから左手を抜くタイミングが早く、この先の動作に向けての準備が出来ています(左腕の脱力)。

ヒップファーストのフェーズでは体軸に傾きを作りません。右脚を「くの字」に折り、右股関節の内捻り(内旋)によって下半身(骨盤)の開きを抑えつつ、捕手方向へと踏み出します。右脚を一塁側へ回し込むような使い方をしない為、ストライクゾーンへ向けての直線的な動きが取れます(動作が蛇行しないので制球面でのメリットが大きいと思われます)。

上半身の動きとしては、ヒップファーストの辺りから右手の小指を上に向けて右肩の開きを抑えています。その後に肩のラインまで引き上げたグラブを縦へと下ろして行来ますが、その反作用として左腕がトップへと向かいます。筋力に頼らずに左腕を引き上げて行けるので故障リスクの低減に繋がると思われます。 トップのフェーズでは両側肩甲骨が内に寄っており(内転)、この際の右肩甲骨の引き込み(内転)によって左腕を導くような上体の回転動作を促しています。この写真アングルでは伝わらないと思いますが、左腕の脱力~引き上げ~トップ~リリースまでの間は打者目線からボールが見えずタイミングが取りにくい動きになっていると思われます。

正面からの連続写真は過去記事「当たらないストレート」に掲載しています。

最大加速期のフェーズでは左上腕部の外旋に合わせて前腕が回外(外捻り)していますが、フィニッシュのフェーズ(13枚目の写真)では左の掌が一塁方向を向いています。これは最大加速期からフィニッシュにかけて、前腕の捻りを使った状態で腕を振れているという事になりますが、この動きを使えていると肘にかかる負荷が低減すると言われています(アーム投法が嫌われるのは前腕の捻りを利用しにくい為です)。前途しました通り、右の肩甲骨を寄せる動き(内転)によって左腕を導き出せていますし、肩肘に関する故障耐性は強いと思われます。

この写真アングルだと伝わりにくいですが、右の股関節が内に捻られやすい(内旋気味)特性が有りますので、インステップ した状態でリリースしていますが軸足(左脚)の伸展動作(伸ばす動作)によって骨盤を押し込めており、重心移動は問題なく行えています。トップからフィニッシュにかけて左足首、左膝、左股関節の下肢三大関節がほぼ直線状に並んでいる為、押し込むような球威へと繋がっているはずです(実際に重そうな球質です)。

フォロースルーではグラブが二塁方向へ流れていますが、インステップする為に右股関節を支点とした上体の回転動作が実現しにくく、対角へ強い球を投げる為には必要な動きなのだと思われます。下半身の動きとしては蹴り上げられた左脚が一塁方向へ振られておらず、スパイクの裏が天を向くタイミングにも時間差があるので、骨盤は縦に回転しているように見えます(横振りを抑制出来ている)。右脚のアクセル筋群(臀部とハムストリングス)による起こし上げ動作は行えていますが、右足の踵を使って踏ん張っているので体重移動のベクトルを捕手方向へと向け切れていない事が気になりますが、上体は倒し込めているので許容範囲でしょう。



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高校時代から投げ方が大きく変わったという事は無さそうですが、下半身の柔軟性は向上していると思われます。
体格もスケールアップしていますし、取り組みに関する意識の高さが伺えます。


投球フォームとは関係ない話になりますが、プロ入り後の可能性という話になった場合、適性はリリーフなのかな?と思うようになってきました。高校時代に最も大きな爪痕を残したのはリリーフとして登板した大成高校戦(高校3年の夏)だったと思うのですが(※打者11人から9奪三振)、その名を全国に轟かせた富士大学戦(大学2年春季)での投球もリリーフ登板によるのものでした。出力を制限しながら投げる必要の有る先発投手としては変化球の持ち球的にも(軌道の山が出るスライダー系)やや苦しいように思えるので、現状としては短いイニングで威力を発揮するセットアッパーやクローザーとしての可能性を感じております。



当たらないストレート





昨春の全日本大学野球選手権(富士大学戦)で快投を見せ、全国区となった山本一輝投手(中京大学 2年生)。 元LAドジャース・スカウトの小島圭市氏からは「しなやかさが出てきたらドラフト1位候補」という評価を得ています。今回はそんな山本投手の投球フォームについて分析したいと思います。※同一投球動作内での連続写真ではありません。

ワインドアップ期からヒップファースト期
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セットポジションからの始動。右膝を胸まで抱え上げ、右半身から本塁方向へ加速していく為の準備が出来ています。胸の当りでグローブから腕を抜いており(ハンズセパレーション)早めに投球腕を脱力して行くような意図が伺えます。ヒップファースト後の骨盤が後傾した辺りでは頭部を後方へ残すような軸の傾きが作れています。

サイドステップ期から最大加速期
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この記事の最初に貼った蔵建て男さん@kuratateoのツイートにもあるとおり、山本投手のストレートは打者の反応がワンテンポ遅れるのですが、その秘訣がここから先のフェーズに詰まっています。体側に沿って腕が引き上げられトップで前腕が回内しています。ここから前腕を回外させて最大加速期へ入って行くのですが、この間はずっとボールが隠れています。最大加速期で肘を鋭角に使っている為、ここでもまだボールが見えてきませんこれによって打者はリリースの瞬間にしか目付けが出来ずタイミングを取るのが遅れます(もしくは早めに釣り出される)。恐らくですが、一時期話題になった「マルかいてポン」で腕を振れているタイプの投手だと思われます。出所が見にくいだけでなく、上から叩いていけるので制球面にも強みのある腕の振り方です。(トップで胸椎の反りを使えている割に胸郭の突っ込みが甘いような気がするので、そこは課題でしょうか)

リリース期からフィニッシュ期
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リリース期では両肩から肘までを結んだラインよりも前腕が立っています。このアームアングルによってボールの回転軸が縦になっている可能性が有ります。右打者への外角高めの釣り球で空振りが取れているのはリリース期までボールの目付けが出来ない事もありますが、打者の予測を超えるような軌道で球が伸びて来る為かもしれません(ストレートにバックスピンがかかっている)。又、リリース期で下肢三大関節(股関節、膝、足首)が垂直に整っておらずインステップ気味になっています。本来であれば上体の回転動作と重心移動を阻害し、右打者の内角を突くような対角の球は投げにくいはずなのですが、グラブ側の腕を上手く使って(右肘を右股関節まで接近させる動き)上体をスムーズに回せています。これによってターンが速くなり、打者に合わされにくくなる効果も発生していると思われます。フィニッシュでもグラブを後ろに逃がす事で上体を深く倒し込めております。軸足の蹴り上げは然程高く上がっていませんが身体的特性を考えれば上手くカバーできていると思います。

総評
ストレートは常時140km/h前後という感じですが、テクニックを多用する事でガン表示以上のボールを投げ込んできます。脚が内に入りやすい特性なので回転動作と重心移動が阻害されやすいタイプですが、上体を上手く使ってカバーしています。バイオメカニクスの観点から習得した投げ方というよりは練習と実戦の中で身について行ったような投げ方なのだと思われますが、身体操作性の感覚に優れている投手なのかもしれません。柔軟性とフォームの再現性に関する指摘を受けているのでストレッチによる可動域の確保や動作内での反射の習得に取り組んで、ドラフト1位指名でのプロ入りを果たして欲しいですね。


合わせて読みたい→「ワンカラット」

 


ワンカラット

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谷祥太投手(現 東海学園大)、上原大輝投手(現 名城大)等、大学進学後も硬式野球を継続する好投手を毎年のように輩出している公立の雄・東郷高校野球部。その中でも一際強い輝きを放っているのが今年度(平成28年度)のエース格だった山本一輝投手。夏の県大会前に、前年度のエース格だった上原大輝投手から「今年のエースは凄いですよ。」と教えてもらっていたのですが、実際に目の当たりにしたピッチング内容は想像を超えるものでした。最速140km/h超のストレートに鋭く曲がるスライダーを織り交ぜる本格派タイプのサウスポーで、リリーフ登板した夏・県大会3回戦の大成高校戦では打者11人を相手に9奪三振(!?)の快投を見せ、続く4回戦の東邦高校戦では9失点を喫したものの後の甲子園出場校を相手に真っ向勝負を挑み6奪三振を記録。しっかりと爪痕を残しました。まだ下半身(股関節)に柔軟性がありませんが全体的なバランスが良く、体型的にもピッチングスタイル的にもブレイク前の中尾輝投手(名古屋経済大→ヤクルトスワローズ)を彷彿させる部分があるので、本人が自覚的に取り組めば大学球界でも主戦投手にまで上り詰める可能性は十分あるでしょう。それにしてもこのレベルの投手がメディアにも取り上げられず未だ無名のままというのは一体なぜ?下手したら4年後はドラフト候補になっててもおかしくないと存在だと思ってます。という訳で山本投手はこのブログの隠し玉です(笑)活躍したらご褒美ください。


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